ヘリコバクター・ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリ菌は、様々なものを溶かすことができる強力な酸性の液体である、胃酸の中でも生きることができる細菌です。ピロリ菌が生成するアンモニアなどの物質が粘膜にダメージを与えることによって潰瘍や炎症を起こしてしまいます。そのため、ピロリ菌を放置しておくことで慢性胃炎などになるだけでなく、萎縮性胃炎に進行することでがんなどが発症するリスクが高まります。
ピロリ菌はもともと子どもの胃の中には存在せず、井戸水などを通して幼少期に感染する場合が多いです。その他、食べ物を口移しにするときなど、親から子どもに感染する場合もあります。井戸に関しては、上下水道が整備されている先進国では減少傾向にあるものの、幼少期の口移しも控えたほうが良いでしょう。特に、ご家族に胃がんや胃潰瘍を発症している方がいる場合には、感染の確率も高くなるため止めておく方が望ましいです。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の検査は胃カメラ検査ででき、治療に関しては内服薬にて1週間程度で治療ができます。
ただし、1回目の除菌治療医の成功率は100%ではないため、除菌できなかった場合には2回目の治療が必要です。1回目の成功率は約70〜80%程度であり、失敗しても抗生剤の種類を変えることで、2回目の治療ができます。2回除菌治療をすることによって、97〜98%除菌に成功します。
ピロリ菌を長く放置してしまうと、胃がん発症リスクが高い萎縮性胃炎に進行してしまう可能性が高くなるため、感染が確定した時点ですぐに除菌治療を受けるようにしましょう。また、除菌治療をしておくことで、将来子どもなどに感染させるリスクを避けることができます。
ピロリ菌の検査方法について
ピロリ菌の検査に関しては、胃カメラ検査を行ったときに組織片を採取する方法と、それ以外の方法があります。胃カメラ検査の時に慢性胃炎と診断された時に組織片を採取して検査をしたのであれば、保険適用が可能です。また、検査の結果感染していることが判明した場合、除菌治療を受ける際も保険が適用されます。
胃カメラ検査時に実施するピロリ菌感染検査
胃カメラ検査を行ったときに、組織片を採取することでピロリ菌に感染しているかどうかを確認できます。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が身を守るためのアンモニアを作り出せるのは、ウレアーゼという酵素の働きによります。アンモニアはアルカリ性であるため、胃酸を中和することができます。
そのため、採取した組織片のpH変化を調べることで、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べることが可能です。
鏡検法
感染しているかどうかを確認するために、顕微鏡で採取した組織片を調べます。
培養法、薬剤感受性試験
培養法は、採取した組織片のピロリ菌を培養することで、菌株の種類を調べることができる方法です。抗菌薬感受性試験を行うこともできるため、有効な薬剤などを調べる詳細な検査に役立ちます。
胃カメラ検査を実施しないピロリ菌感染検査
尿素呼気試験(UBT)
特殊な尿素が含まれている薬剤を服用し、服用前と後の呼気を調べることによって、ピロリ菌が存在する場合には特殊な二酸化炭素とアンモニアに分解することが可能です。
特殊な二酸化炭素の増加率を調べることによってピロリ菌を調査することができ、胃カメラ検査以外では信頼性の高い検査方法となっています。
抗体測定法
抗体測定法を使うと、血液や尿、唾液などを採取して調べることができ、抗体を測定することによって感染しているかどうかを判断することができます。
便中抗原測定法
ピロリ菌抗原は、便を採取することによって調べることができます。
ピロリ菌感染検査の健康保険適用について
近年、保険診療の範囲が拡大されたため、慢性胃炎の場合の検査であっても、胃カメラ検査時のピロリ菌の検査が保険適用されます。もともと胃十二指腸潰瘍などは指定された疾患ではありましたが、例え確定診断があったとしてもピロリ菌の検査には保険適用がされないということはありません。
また、胃カメラ検査でピロリ菌が確定した場合には、除菌治療も保険適用範囲内になります。
6ヶ月以内に人間ドックなどで胃カメラ検査を受けた方について
人間ドックなど際に胃カメラ検査を受け、慢性胃炎の診断を受けた場合であっても、ピロリ菌検査を保険適用で受けられ、検査結果が陽性であれば除菌治療も保険適用で受けられます。
ピロリ菌の2次除菌・3次除菌
ピロリ菌の除菌治療は失敗する場合もあるものの、だからといってそこまで気にする必要はありません。1回目で失敗しても2回目で成功する確率が高いからです。また、1回目と2回目では抗生剤を変えて治療しますが2回とも保険適用になります。除菌の成功率としては1回目が70〜80%、2回目が97〜98%程度であり、2回目にはほぼ成功しますが、3回目の除菌治療も可能です。
ただし、3回目以降の除菌治療は保険が適用されず、自由診療となります。全ての費用を自費で支払わなくてはならないため、注意しましょう。
自費診療でのピロリ菌検査と除菌治療
その他、例え2回目の除菌治療であったとしても保険診療に定められているクラリスロマイシン(クラリス)とサワシリン(ペニシリン系抗生剤)以外の抗生剤を使用すると、保険の適用ができなくなります。もしアレルギーがあるなど体質的にこれらのお薬を使えない場合は全て自費での診療になることを知っておきましょう。
ピロリ菌除菌治療の流れ
ピロリ菌の除菌治療を行うには、まずピロリ菌の有無を確認しなければなりません。そのため、胃カメラ検査で粘膜の状態を調べて組織片を採取し、鏡検法で感染しているかどうかを詳しく調べます。陽性であれば除菌治療を始めることになります。
1薬剤の服用
ピロリ菌の除菌のためには、抗生剤を2種類、除菌効果を上昇させることができる胃酸分泌抑制剤(PPI)を7日間服用することになります。
懸念される副作用
- 肝機能障害
- 蕁麻疹
- 下痢
- 味覚異常
薬剤を服用したことによって上記の症状が現れたなら、すぐに病院へご連絡ください。
その他、蕁麻疹や皮膚の腫れ、喘息の症状やひどい咳、息苦しさなどを感じた際にはいったん服用を中止して医師にご相談ください。
2除菌判定
除菌治療をしたとしても、結果は数ヶ月しなくては分かりません。当院では、除菌治療後2ヶ月程度経過してから除菌できているかどうかの検査を行います。検便や採血によって抗体検査などを行い、ピロリ菌が除菌できているかどうかを判断します。
1回目の治療で約70〜80%の成功率があるため、ピロリ菌が検出されなければ除菌が成功しているということになるため、治療も終了します。しかし、失敗したとしても2回目の治療が行われるため、医師からご説明させて頂きます。
32回目の除菌治療
2回目の除菌治療が必要な場合は、抗生剤のクラリスをメトロニダゾール(商品名:フラジール)に変更して行います。
42回目の除菌判定
1回目と同じで、除菌治療から2ヶ月経過してから判定を行います。血液を採取し、抗体検査を行いますが、2回目の除菌治療を行っても失敗する確率はわずか2〜3%程度です。3回目以降は自費診療にはなるものの、除菌ができていなければ治療した方が良いでしょう。中には4回目や5回目で除菌が成功するケースもあるため、医師とご相談ください。